2015年〆の例会の様子その2(ぎりぎり間に合った終戦70周年メモリアル対戦:ASL沖縄「嘉数高地」の戦い4人戦。その壱)

(AH/MMP)ASL Journal#2収録地図+#3収録シナリオ
シナリオ[J64]
"American Tragedy
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▲前夜に急いで日本軍初期配置を決め、プロットした盤面。黄色の蛍光チットは、白い点線で囲まれた地下洞窟ゾーンから地表に出るトンネル出口の位置▼
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▲地下洞窟ゾーン=複合洞窟「嘉数鞍部(カカズ・サドル)」と「嘉数中央(カカズ・センター)」の配置。このシナリオにおける反斜面戦術の有効性に気づかず、馬鹿正直に敵側斜面に銃眼を設ける愚かさはやがて知れる事となる...
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▲最大の激戦地、嘉数西方70高地(カカズ・ウエスト)の配置。配置制限が厳しくて隅っこの3ヘクスにしか配置できない。しかし平地1ヘクスと竹林2ヘクスしかないのに、塹壕2個って、竹林への塹壕配置は禁止されとるやん!?
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▲「嘉数村(カカズ・ヴィレッジ)」の配置。銃眼=洞窟の一つを32センチ噴進砲の発射壕として良いので写真ではN17ヘクスにしたが、よくよくルールを読むとLOSを必要とせず(着弾観測もいらず)、好きなヘクスを指定して発射できるので、米軍から目視できない位置(それこそ反斜面)に配置し直した。
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▲G20から3ヘクス以内に速射砲と歩兵砲、トーチカを配置できるので当然のようにトーチカ内に砲を入れたが、殆ど米軍を目視できない位置なのでゲーム中は全く活躍できずじまい。こんなことなら、砲は外に出しておいて人力移動で敵を撃てる位置に移動させるべきだったと激しく後悔した。
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▼この年の瀬に、今までやったこともない洞窟陣地戦をやることにしたのは、昨年の11月に「来年2015年の5月連休例会では終戦70周年記念としてこの嘉数を皆でプレイしよう」とDublinさんが超拡大コピーマップを制作してくれたのに、叶えられなかった為。それを、先の大戦に対するお言葉もあった天皇誕生日に、YSGA今年最後の例会でもある当日プレイできたというのは感慨無量だった。
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▼上がオリジナルマップ、下がDublinさん特製超拡大カラーコピーマップ。オリジナルよりカラーコピー拡大の方が発色が良くて綺麗だったのが印象的。
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帝國陸軍のグローバル・スタンダード:ASLに見る日本軍

(AH/MMP)ASL:日本軍モジュール「コード・オブ・ブシドー」


 かつてスコードリーダー(AH)が戦闘指揮官と呼ばれた時代から、我々日本人ゲーマーが待ち望んでいたものは日本軍の参入でした。しかしその夢は叶う事なくウォーゲーム・ブーム期は過ぎ去り、アドバンスド・スコードリーダー(以降ASL)の太平洋戦争モジュールとしてそれが発表された時には、もはやそれをフォローする余力も無くなっていたのでした。

 その後、発売元であったアヴァロン・ヒル社も21世紀を目前にして消滅。しかしASLは、意外な人物の尽力によって、かつての隆盛を取り戻したのです。

その人物こそアメリカ大リーグ、2001年のワールドシリーズ・チャンピオン、アリゾナ・ダイヤモンド・バックスのエース、カート・シリング投手だったのです。シリング氏はオフ・シーズンにはASL大会に参加して、会場に居るASLプレイヤー全員にハンバーガをおごるほどの大のASLファンで、好きが高じてASLの版権を一手にになうMMP社(マルチ・マン・パブリッシング:ASLの複数兵駒に掛けた社名)を設立。精力的にASLの出版を進めています。MMP社主にして大リーグMVP受賞の彼こそ、世界一有名なウォーゲーマーと言えるでしょう(SGと野球の両立って、どんな青春時代を送ったんでしょう?)。


しかしASLの日本語ルールも絶版となって久しい日本では、ネット上のウェブサイトやコミケ等の歴史同人活動によって、細々とASLの翻訳や研究が進められているに過ぎません。戦術級ゲームの趨勢が、世界的に見てASLに集約されつつある現在、日本でも何らかのフォローがあるべきだと考えるのです。しかし基礎となる日本語ルールが手に入りにくい現状では、ここで突っ込んだルールの話をしても仕方ありません。

そこで今号附録ゲーム「沖縄」に合わせ、今やグローバル・スタンダード(世界標準)とも言える戦術級ゲーム“ASL”における帝國陸軍の姿を見ていきたいと思います(また本誌42号「バトル・フォー・チャイナ」では、「20世紀中国SG総覧」や「ユニットよもやま物語」においてASL米海兵隊・中国軍モジュール「ガン・ホー」について触れられているので、これを機にASLへの興味を喚起できればと願ってやみません)。


● 敵の頼るは鉄の量、我の頼るは肉の量


 ASLは原則として歩兵分隊を1単位とする、中隊同士の衝突を再現するSGと言えます。

このレベルの戦闘では、敵に指向する弾量が物を言うため、乏しい火力、性能の劣る火器、貧弱な輸送能力に悩まされた日本軍歩兵分隊ユニットの額面能力値が、他国より劣っているのは仕方の無いことと言えるでしょう。

しかし額面値だけ見ればイタリア歩兵よりややマシといった程度の日本軍ですが、実はASLにおいて異様な強さを誇っているのもまた事実なのです。


通常ASLでは、敵の射撃を受けると大抵士気チェックを強要され、それに失敗すると混乱したとして裏返され、回復するまで戦闘行為を行えないのですが、日本の歩兵分隊は士気チェックに失敗したとしても混乱せず、その代わり減少戦力となって行動を継続できるのです。これは防禦側から見ると、撃っても撃っても日本兵が屍を乗り越えて肉薄してくる恐怖を、また攻撃側から見ると最後の一兵まで抵抗を続ける頑強さを意味しています。

しかも日本軍が攻撃側であれば、通常は手榴弾投擲距離での近接射撃戦を表す白兵戦(Closed Combat)を、文字通り銃剣で渡り合う格闘戦(Hand-to-Hand Combat)として解決されるのです。

もともと格闘戦ルール自体、ミニチュア使用を前提としたデラックスASL(ミニチュア対応なので、個々のヘクスが巨大)の専用ルールなのですが、日本軍に限りこれが標準適用されるのです。格闘戦の場合、通常の白兵戦に比べて除去率が高いのはもちろん、日本軍には特別ボーナスとして-1ダイス修正が適用されるのです。したがって火力で劣る日本軍は、おのずから白兵突撃に依存することになります。

しかし歴史が証明する通り、簡単に白兵戦に持ち込めるはずがありません。そこで出てくるのが「バンザイ突撃」ルールです。移動期に突撃を先導してくれる指揮官さえいれば1ユニットだけでも行える万歳突撃は、8移動力以内で侵入可能なヘクスにいる敵を視認している場合に宣言でき、士気値が1上昇した状態でそのヘクスへ殺到できるのです。

通常、敵のいるヘクスに侵入が許されるのは、突撃期(手番側が1ヘクス移動できる期)だけなのですが、日本の万歳突撃とソ連の人海突撃、そして戦闘狂乱による突発的な突撃(狂暴化)に限り、移動期に敵のヘクスに突っ込めるのです。敵ヘクスに突入すると混戦状態に陥り、他のヘクスに対する防禦射撃を阻止できるので、後に続く味方の移動を大いに助けることができます。

ソ連軍が人海突撃を行う場合、その宣言には各ヘクスにつき最低2個分隊が参加する、最低3ヘクスに連なるスクラムを組まなくてはならないため、条件を満たすこと自体が困難です。また断行しても多大な犠牲を払うのは確実で、さらに混乱せずにたどり着けるという幸運にも恵まれなくてはなりません。狂暴化による突撃の場合、その発生自体がイベントに近い上、視認できる最短距離の敵に向かわなくてはならないので、戦術として利用することはできません。

唯一日本軍だけが、意図的に万歳突撃を使って移動期に敵ヘクスへ突入できるのです。

ASLにおいてこの戦術は、戦車ユニットの常套手段なのですが、日本軍はそれを肉弾で代行せざるを得ないのです。

もちろん万歳突撃の賢明な使い方は、混乱した敵分隊の背後に位置する敵に向かわせて、間接的に潰走不能に陥れるとか、釘付けにならないのを利用して(実はこれが日本軍にとっては重要で、混乱しない日本軍も釘付けにされるとその場に停止して突撃期に動けなくなるのです)、突撃後に自然と敵を包囲する形になるよう恣意的に活用することです。


さらに日本軍を特徴付けるものに、「対戦車肉薄攻撃兵(タンクハンター・ヒーロー)」と「肉弾攻撃兵(DCヒーロー)」があります。ASLでは士気チェックの際、ピンゾロを出すと「戦渦(ヒート・オブ・バトル)」が発生したとして、その士気チェックを行ったユニットが、戦闘狂乱によって何をしでかすかチェックします。

その結果分隊の質が向上したり、狂暴化したり、突然降伏したりするのですが、ダイス目が良いとヒーローと呼ばれる、指揮官とは違う個人ユニットが貰えることがあります。ヒーローは固有の1火力と射程を持ち、他の射撃に参加することで有利なダイス修正を与えたり、一人で戦車砲塔によじ登って車長機銃を罰則なしで撃てたりする、愉快なボーナスユニットなのですが、日本の対戦車ヒーローと肉弾ヒーローは、普通のヒーローとは全く異なる機能を持っています。

彼らは英雄と言うより生きながらにして既に英霊とも言える存在で、対戦車肉攻の場合は敵戦車を視認した分隊が、射撃の代わりに対戦車肉攻兵派出チェックを行い、成功すると小脇に対戦車地雷を抱えた兵隊の描かれた肉攻兵ユニットが登場します。そして対戦車肉攻兵は、自軍移動期ならその戦車に対して単独で「万歳突撃」を行い、同一ヘクスに突入したら即座に対戦車攻撃を解決します。この際チェックに成功すれば、対戦車ふとん爆雷(戦車のエンジンデッキ上に載せると下向きに爆発してエンジンを破壊する)や、急造爆雷、刺突爆雷、磁気吸着破甲爆雷等を活用できたとして、2ダイスで8以下を出せば戦車を破壊することができます(通常は5以下)。戦慄すべきことにこの対戦車特攻兵の派出チェックは、大戦末期の独軍に許されるパンツァーファウスト射撃チェックと同じ方法で、シナリオの時期と登場する分隊数によって発射回数に制限が加えられる事まで同じなのです。独軍が使い捨て対戦車無反動発射擲弾なのに対して、日本は使い捨ての対戦車肉攻兵しか手がないというわけです(対戦車/肉弾兵は手番ターンの最後に~たとえ爆雷が不発でも~自動的に除去されます)。

同じく肉弾攻撃兵は、シナリオで梱包爆薬(DC)を与えられている場合にのみ登場し、対戦車肉攻兵と同じ手順で派出されて、万歳突撃の要領で爆薬を抱えたまま敵ヘクスに突入し、敵もろとも自爆するという文字通りの肉弾攻撃です。

世界で唯一日本軍だけが実行できる混乱無視での組織的突撃、そして対戦車砲弾や重砲弾の代わりとなって我が身を投げ出す挺身斬込隊員たち。

同じ日本人として、ゲーマーとして、これら死の恐怖に直面した時に発揮される、想像を絶するエネルギー、生命のラスト・スパートとでも言うべき、正視に堪えない超人的なエネルギーの激発をそこに見出して、暗然たる気持ちに襲われてしまいます。

ASLでは確かに、万歳突撃や対戦車/肉弾特攻は、敵プレイヤーを恐怖に陥れるに充分な威力を持っています(勘違いされないよう申し添えますと、これらが敵に脅威を与えた戦闘だけがシナリオ化されているのです。太平洋戦争の大部分がシナリオ化するに値しない一方的戦闘であったのを忘れてはなりません)。

しかし一国の戦術としてこんなものが讃えられて良い筈がありません。軍上層部の時代遅れの感覚と思い上がりのために、多くの人命が犠牲にされたことを誇ることなど、どうしてできるでしょうか。


開国以来、欧米列強に肩を並べるため、国力不相応な軍を維持しなければならなかった日本は、日露戦争の奉天までが事実上の限界で、第1次大戦によって証明された、石油と補給力なしには前線の機能が一切停止するという事実には、目をつぶらざるをえませんでした。

こうして唯一の拠りどころであった日露戦争的前提を完全に失った帝國陸軍は、「無敵皇軍」という自画自賛的虚構に足を取られ、その虚構が現実であるかのように演じ続けなければならず、ついには「断じて行えば鬼神もこれを避く」といった、万に一つの僥倖を空頼みしての自暴自棄な突撃、挺身斬り込み(主に夜間敵戦線後方へ浸透し、機関銃座や戦車、砲兵陣地を爆砕することを目的とするも、殆ど失敗)にしがみつく他なかったのです。


● 歩兵の強さはビンタの力


ユニットとしての日本軍を語るとき、精神面での強さを見逃すことはできません。

日本軍は、歩兵戦闘の基本である包囲射撃を受けても士気が低下せず、行動を共にしていた指揮官が除去されても、普通は士気チェックのところを釘付けチェックで済ませることができます。そして通常は釘付けチェックに成功しなければ行えない対戦車突撃や、単独でいる敵指揮官やヒーローを、移動中に蹴散らす対人蹂躙移動も、チェックなしで行えます。

また潰走フェイズにおいて決して降伏せず、戦意喪失状態に陥ることもありません。加えて白兵戦において敵が生け捕りを宣言した際、自決を試みることができます(指揮官とヒーローはチェックなしで自決できます)。また肉弾兵と同様に、爆薬を持った分隊は移動終了時に自爆することもできます。これは肉弾兵の派出チェックが射撃扱い(続く移動が禁止される)なので、派出に失敗して機を逃すよりはと万歳突撃の一環として行われます。

さらに初期配置で与えられた分隊のうち1割と、1944年以降使用限度までの対戦車肉攻兵を、標準ルールとして隠匿配置(存在するヘクスを書き留めて盤上には駒を置かない配置法)させることが許されています。また日本軍エリートと1線級歩兵分隊は静粛と見なされ、白兵戦を挑まれた際、待ち伏せチェックに1有利な修正を得られます。さらに全ての日本兵は、プレイ中に隠蔽(?駒を置いて身を隠す)を得る試みの際、有利な-2修正がもらえます。

また戦闘指揮官の邦題が示すように、通常は混乱した友軍を回復させるという最も重要な役割を果たす指揮官ユニットですが、限られた混乱ユニットしか発生し得ない日本軍指揮官の役目は、万歳突撃の決心と、スタックしている歩兵の士気値を1上昇させる代わりに、もし回復に失敗したら、怒鳴り散らし殴る蹴るの暴行を加えて、失敗した分隊の質を低下させてしまうというソ連の政治将校にも似た効力を発揮します。また指揮官の士気値が他国に比べて異様に高い割りに、指揮能力が低く抑えられているのも特徴でしょう。しかも決して釘付けにならず、士気チェックに失敗しても混乱せずに負傷面に裏返されます。そうなると更に指揮能力が低下し、移動力も半分となるので一気に使い辛くなります。


帝國陸軍の場合、気迫こそがその人を評価する最も大きな基準であり、神がかり的言動と暴力で超能力的雰囲気を振りまく、大言壮語的言いまくり型人物が出世する傾向にありました。日本軍には、アレキサンダー大王のマケドニア方陣以来の幾何学的な組織という西欧的な考え方とそれを生み出す哲学が無かったため、そういう組織的発想に基づく軍隊組織とは全く異質の秩序が必要とされ、それはやがて暴力とそれに基づく心理的圧迫だけの秩序となり、失敗を犯した将校を自決させることによって、全将校とその部下を統率し、同時に内務班教育という土俗的な私的制裁(ビンタ)によって末端の秩序を維持するという形になりました。共にビンタで痛めつけられた、同年兵同士の和と団結という人脈による一枚岩的結束が、日本兵の強さとなったのです。

しかし戦局が悪化するにつれて、軍と世間は「死すべきときに死なないならば殺してしまえ」という常軌を逸した死と屈辱の論理に変わっていき、前線の日本兵は敵に対する恐怖よりも、「死と屈辱」への恐怖から条件反射的に奮闘したのでした。


● むしろ突撃して万歳を唱えん


これまでは日本軍特有の強さについて見てきましたが、ここからは日本軍特有の弱さについて触れたいと思います。

まず国民の技術的な民度が低いため、兵器操作班以外のユニットが中・重機関銃や対戦車銃を射撃した場合、鹵獲兵器扱いとなって発射頻度(ROF)の低下と故障率の増加を招きます。また万歳突撃自体は強力なのですが、半狂乱になっているため待ち伏せされ易く(Lax: 鈍兵)、待ち伏せされると白兵戦を一方的に解決されます。これにより「銃剣突撃なんて、足元に手榴弾を転がせば一発で全滅だ」と言われた状況が再現されています。

さらに戦渦チェックにおいては、日本軍であるという理由でまず+4ダイス修正が適用され、結果9以上で狂暴化します。特に指揮官が狂暴化すると、無条件でスタック全体を狂暴化させて、制御不能な暴走を始めてしまいます。

このように他国が弱さから強さを引き出しているのと反対に、日本は強さが弱さに直結していると言えます。

混乱することなく、犠牲を払いながらも戦いを続行できるということは、逆にいえばそれだけ消耗が早く、太く短くというヤクザな軍隊である事を意味しているのです。

また戦闘中に投降して捕虜になる事は、ゲームでは相手に負担を与えることにもなる(問答無用で射殺すると敵に徹底抗戦を決意させるし、かといって捕虜監視に部隊を割くのも勿体無い)のですが、日本軍相手にその憂慮は必要ありません。さらに44年以降、もし日本兵の捕虜が得られれば、それに対する尋問チェック(隠匿配置ヘクスの露呈や隠蔽マーカの除去ができる)に有利な-1修正が適用されます(ただしソ連軍には適用されません)。

加えてASLでは、手番ターンに限り、指揮官なしで混乱ユニットの1つを自己回復させる試みができ、その際ピンゾロを出すと新たな指揮官が登場するのですが、日本軍に新たな指揮官は登場しません。


これは帝國軍人が直属上官の命令以外、絶対に従ってはいけない存在であったことを表しており、指揮官の能力が低く抑えられているのは前線での柔軟性のなさを示しています。

日本軍の場合、指揮官の責任感とは命令への盲従度を計る言葉であり、自らの決断、自らの責任で命令を逸脱することは、統帥の本義を無視し、陛下の兵士を私兵として動かしたとして、自決させるべき破廉恥な無責任指揮官とされました。不可能な命令に対する思考停止こそ、はじめから終わりまで帝國陸軍の下級将校と兵の常に変わらぬ最後の結論でした。

また常に即戦即決、前面の敵を片付けるという強迫観念に駆られていた日本軍は、片付かないと狂いだして自らを片付けるという性質がありました。補給力なき帝國陸軍は「攻撃精神旺盛なる軍隊」だけを目指して、常に動物的攻撃性が主導権を握り、戦果の割に犠牲の大きすぎる「気迫誇示的」突撃を繰り返して滅んだのです。

そして「日本軍に捕虜なし」といった、組織の名誉の絶対化が個人を抹殺し、組織の名誉という考え方が日本を破滅させました。

結局、日本軍に欠けていたのはヒューマニズムだけではなく、合理主義の精神、人や物を名目に拘泥することなく活かして使うという心がけでした。これが欠けている軍隊は個々の戦闘でいかに熱狂的に戦っても戦争には勝てない、戦争といえども人間を大切にする方が勝つという原則を、ASLの帝國陸軍に見出すことができるのです。


●ASLで見る沖縄戦


さて今号の特集「沖縄戦」もASLでは一大テーマとなっています。

1999年にはクリティカルヒット(CH)社から「首里前面の苦闘(Ordeal Before Shuri)」と題された、45年4月9日から24日までの嘉数稜線のキャンペーンモジュールが出され、翌2000年にはそれを補正する様に本家MMP社から「嘉数尾根」(ASL Journal第2号附録)が出されています。面白いのは「嘉数尾根(MMP)」が史実マップを使った単なる単発シナリオ集であるのに対して「首里前面の苦闘(CH)」では、沖縄日本軍の秘密兵器320㎜臼砲がユニットとして登場するほか、沖縄戦特有の兵器として米軍の地上戦用VT信管、対砲兵射撃用音響観測機、対地攻撃ロケット弾がルール化されています。また洞窟陣地を配置する角度によって敵方斜面、反斜面の別があり、これによって日本軍の有名な反斜面戦術が再現できるようになっています。

またこれまでに発表された多くのASL沖縄戦シナリオの中には、4月6日北上原稜線での六十二師団前哨部隊の奮戦を描いた「長谷川中尉の前哨陣地(Tanigawa’s Outpost:CH62)」や、5月4日の日本軍総反攻で唯一突破に成功した二十四(石)師団伊東大隊を描いた夜戦シナリオ「大理石の男(Men of Stone: Z24)」、シナリオ開始時に米戦艦の40㎝砲弾が降り注ぐ5月16日のシュガーローフでの戦いを扱った「死は鴻毛より軽し(Lighter than a Feather:CH55)」、変ったところでは、占領した小禄飛行場をブルドーザーで片付け中の米海軍設営隊(Seabees)に突如襲い掛かる日本海軍沖縄方面根拠地隊の敗残部隊という「設営部隊の兵士達(Soldiers of Construction:Z28)」などがあります。この「設営部隊の兵士達」シナリオでは、6ターンの間に米軍が12点相当の損害を出す前に、滑走路上の残骸をブルドーザーで撤去すれば勝ちというもので、日本軍側も槍部隊と呼ぶに相応しい2線級分隊が、敵ブルドーザーに対戦車肉攻を敢行してこれを捕獲。救援に駆けつけた米軍ブルドーザー戦車と対決するといった壮絶な展開になったりします。

しかし沖縄戦の日本軍を象徴する洞窟陣地ルールが、宇宙の戦士(AH)におけるアレクニドのプロット式トンネル網を髣髴とさせる煩雑なもので、おいそれとはプレイできないのが残念なところです。


● 最後に

 

もしASLに興味が湧いたなら、ネット上でアクティブなASLプレイヤーを探し、直接会って、とにかく口頭説明を受けてプレイしてみることです。歩兵戦闘だけならさして難しくありませんし、日本語ルールも探せば手に入らないこともないでしょう。ただ読むのは、まず教えてもらいながらプレイした後がいいでしょう。なにせルールブックは英字略号で溢れており、どれほど多くのゲーマーがルールに目を走らせた段階で投げ出したか知れないのです。


*なおMMP社から第2版ルールが出されましたが、幸い旧版ルールを否定するような変更はありません。ルールの理解を助けるための追加補足や例示の追加がほとんどですから「英語が読めない人間は置いてけぼりかよっ!」と嘆く必要はありません。もちろん手に入れて読むに越したことはありませんが。


★了


by ysga-blog | 2015-12-23 20:09 | ASLコンコマコンフリ三大戦術 | Comments(2)
Commented by 今日も6ゾロ at 2015-12-28 04:16 x
こんにちは。私もこのMAPを使ったシナリオをいつかやってみたいと思っていました。さて、写真コメント中、気になる表現がありましたのでお知らせしておきます。「竹林」という語が出ておりましたが、KAKAZU RIDGEはPTOではありません。KR SSRにPTOである旨の記述はないのです。私も最初はPTOだと思い込んでいましたが、さにあらずでした。建物が細かく分割されているのでいかにもPTOで騙されますが、それはレッドバリケードの住宅街も同じこと。麦畑に目を向けるとクナイとは思えぬ区画分けされた耕作地なのでありました。ちなみに、タラワもPTOではありません。
Commented by ysga-blog at 2015-12-28 20:06
今日も6ゾロさん、貴重なアドバイス、まことに感謝いたします。
いつもGame JournalのASL連載楽しみに読ませて頂いております。
 以前から「ASL「嘉数」は太平洋地形ルールだからなー」というのが枕詞になっていたので、勝手に思い込んでいました。ブッシュ(茂み)が竹林だと、米軍の潰走に際しても非常に複雑な事になっていたので、誤解だったと分かって安心しました。面白いシナリオだったので、今度こそ正しい地形ルールで再戦の機会を探ってみます。

追伸...関係ない話ですが、短砲身を表すアスタリスク*付きの迫撃砲って、12ヘクスを超える射撃では不利な命中修正が付くんですね。ライフリングも刻んでいない曲射兵器の迫撃砲には、短砲身の修正は適用されないと長年勝手に思い込んでいて、今回のプレイで指摘されてようやく気がつきました。
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