YSGA第289回定例会の様子その2(AH)海賊黒髭4人戦そのⅰ)

(AH)海賊黒髭
(AH)BLACKBEARD

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ちなみに日本でも海賊本は沢山出されているが、リブロポート社から1983年に出た「イギリス海賊史(上下巻)」こそ、1724年にロンドンで出版された海賊史決定版の邦訳で、「ロビンソン・クルーソー」の作者ウィリアム・デフォーの筆名ではないかといわれているチャールズ・ジョンソン船長の著作であり有名な海賊達と同時代人である作者が、ゲームにも当然登場する"黒髭"ことティーチ、ジョン・ラカム、女海賊メアリ・リードとアン・ボニイ、バッソロミュ・ロバーツ等について、その生い立ちや海賊としての活躍、そしてその最後が詳細に著されており、何を隠そう本ゲームの原典でもあるので是非図書館等で捜して読まれることを強くお薦めしたい。

そんな「全世界に宣戦布告した、海のルンペン・プロレタリアート」こと海賊を真っ正面からシミュレートした希有な作品こそ今は亡きAH社の「BLACKBEARD」である。
 これまで作ったゲームは数知れず(良くも悪くも玉石混合)、思い立ったらゲーム化せずにはおかぬという天才肌のデザイナー、リチャード・バーグ氏の手になる怪作(ジェロニモ(AH)も同様)で、凡人の発想であれば安易にRPG的なキャラクターゲームにしてしまう所を、17世紀の海賊黄金時代に活躍した24人にも及ぶ海賊を、あくまで客観的かつまたその舞台もカリブ海に限定せず、米東海岸沖の北大西洋、西アフリカの黄金海岸沖、紅海から東アフリカ沖合のインド洋まで別海域として含むという(それらは遠洋航海を行えば行き来可能)、ある意味「7つの海は俺の海」的な、プレイヤーの気ままに任せる自由度の高さが特徴となっている。
ゲームの内容をざっと説明すると、最大4人までのプレイ可能で、各人はそれぞれ上限3人までの海賊を操り、いずれかの海賊が「悪名」を100点まで挙げればサドンデス勝利という条件下、マップの随所にある商船登場ヘクス(全66箇所)に獲物が現れるのを待つか、あてどなく海上で全移動力を消費して移動することで獲物を探す(捜索)か、または港湾を襲って港町を焼き討ちすることで海賊としての知名度(悪名)を挙げるのである。
変わっているのは毎回カードの山から1枚引いて誰のプレイヤーターンか決めるというゲーム手順で、それがイベント発生だったりするとカード山は混ぜ直しされる為、運が悪いと延々と自分の手番が回ってこない可能性もある(得てしてそう言う場合あとで連続して手番が回ってきたりする)。加えて獲物(商船)の登場や退出も完全に無作為であり、そういう意味ではハナから多人数ソロプレイ・ゲームと割り切った方がいい。一番楽しめるのはある程度海賊の知識があって、何事も運次第というゲーム展開に納得できる面々とプレイすることであろう(意外と日本語で海賊を扱ったウェブサイトも多いので海賊ファンを集めるのは夢ではないかも!?)。
根幹のシステムは極めて単純で、海賊(船長)はそれぞれ技量値、残忍値、狡猾値、カリスマ性(他に決闘用の格闘値と耐久値)を持ち、移動は船の速さ+6面ダイス1個の出目(最低1移動力保証)、戦闘は対商船なら海賊の技量+船の戦闘力+船の速さの合計から商船の防御力を引いた成功値に対してダイス2個の出目が値以下であれば襲撃成功(原則的に残忍値と同じ悪名獲得)、更にその出目が成功値の半分以下なら船を乗り換える事も可能となり、対軍艦の場合は海賊の技量+船の戦闘力+2ダイスの出目が、軍艦のそれを上回っていれば海戦から離脱することが可能(悪名5点獲得)となる。また港を襲撃する場合は技量+戦闘力+1ダイスの合計が、港の防御力+2ダイスの出目より大きければ焼き討ち成功(港の防御値と同数の悪名獲得)となる。この際捕虜を拷問して(手下の士気高揚にもなる)、その港の情報を得ていれば海賊側も2ダイスできるので成功率はグッと上昇する。なお狡猾値はゲーム中にダイスを振り直しできる回数である。
またプレイヤーが扱うのはあくまで海賊個人(船長)であり、手下(海賊船乗員)のご機嫌取りにも気を配らなければ文字通りの命取りとなる。乗員の士気は初期値7から始まって、商船拿捕や強奪品売却の際のドンチャン騒ぎ(次の手番その海賊は行動不能&その間戦闘力減少)、決闘での勝利などで昂揚し、逆に見つけた商船の国籍(襲撃すると以後イベントで許されるまで同国籍の港へ入れなくなる)や防御力の高さに怖じ気づいて襲撃を取りやめたり、戦闘で手足を喪ったり、壊血病が発生したりすると低下する。そして手下の叛乱に指定されると2ダイス振り、その出目が現士気値を上回ると叛乱が発生。次に1ダイス振ってカリスマ値以上であれば捨て殺し、下回れば慰撫成功となる。
実際プレイすると、有名(優秀)な海賊を引き当てたプレイヤーが悪名をある程度稼ぐも、あと少しあと少しと欲を張って獲物を追う内「最も悪名高い海賊が軍艦に襲われる」というカードが引かれて海戦が発生、大抵この時点で海賊船は戦闘力に打撃を喰っていることが多いので、敢えなく海の藻屑となるか、手下の不満が高まって「殺すぞテメェ」か「無人島に捨て殺し」は当たり前という、痛快なゲーム展開となる。
総括すると、特殊なテーマを特殊なシステム(簡単ではあるが煩雑でもある)で再現した意欲作であり、インパクト絶大な箱絵と共に今後も長くゲーマーの記憶に留められるだけの価値のあるゲームと言っていい。
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▲急いで買いすぎた者の悲運。初版のマップ(今回プレイ使用)には、大西洋とカリブ海の境界線が印刷されておらず(実際、今回のプレイでも問題になった)、商船の登場ヘクスに国籍指定も無い。これが写真の第2版では印刷されている(赤い囲み内)。もし(AH)海賊黒髭をお持ちの方は、マップを確認してみることをお奨めする。
by ysga-blog | 2013-07-13 20:58 | 【探検の世界史:総合】 | Comments(0)
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