★四半世紀来の宿願、今にして叶う。この嬉しさ誰が知ろう...(AH)TAC-AIRのシステム解説❶〔ルール概説〕

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ウォーゲームブームの終焉期だったとも言える、1988年発売の(AH)TAC-AIR。

 20年以上前、英文ルールのまま太公捨さんにインストしてもらいながらプレイし、基本ゲームながらとても面白く、以来ずっと手に入れたくて探してきた。
 それがついに一昨年、当の太公捨さんから譲っていただける事となり、それを知った現代戦ゲームには目がないもりっち(過去にTAC-AIRプレイ経験有)が、「ルールめちゃくちゃ簡単だからインストしながらプレイしましょう」と言ってくださった上、事前に和訳ルールサマリーまで作ってくださったので、先日、念願叶って上級ルールを使って初めてプレイできた。

 事前にルールを送って戴いたので少しだけソロプレイしてみた時では、その余りのシンプルさに(移動・戦闘の繰り返し、原則スタック禁止、マストアタック、戦力差解決)、本当に面白くなるのか不審に思ったほどだったが、実際に対戦してターンを進めてみると、シンプルであるがゆえの面白さ、現代戦らしさが味わえ、これは今後も末永くプレイしていきたいと強く思った次第。

 そこで(AH)MBT、(GMT)Operation Dauntlessに続く、システム解説記事第3弾としてここで採り上げることで、自分自身のゲームシステム備忘録としても機能させたいと思う。
とは言え、私自身、現物を入手するまでに四半世紀かかったゲームでもあり、持っている人も少ないと思われるので、あくまでルールを思い出すよすがとなる程度の簡単な解説に止めたい。

 ⚠️ まずは大まかなゲームの説明から。

 ゲームタイトルのTAC-AIRとは、「Tactical Airpower」の略で、米軍の提唱するエア・ランド・バトルをシンプルにシミュレートすることを目的としている。これを極めて簡単なシステムで再現しつつ、それなりのリアルティを感じさせるのは、デザイナーが(AH)フライト・リーダーの作者だという事からも推察できると思う。

 規模としては作戦/戦術級で、1ヘクス約1.6キロメートル(1マイル)、1ターン約3時間、高度は1レベルにつき約150メートル(と言っても最大3レベル)、1ユニットは原則として大隊規模。
 マップとしては2枚合わせてフルマップ1枚の大きさだが、半分だけ使うシナリオが多い。もりっち調べによると、マップに描かれているのは実在の地方(知名度の低い場所)らしい。
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 登場兵力としては、半マップのシナリオでは師団兵力、フルマップだと軍団兵力といったところで、NATO側は第7軍団(米第1機甲師団、第3機械化歩兵師団、西ドイツ第12装甲師団、第4猟兵師団、それと軍団直属の支援部隊各種)、WP側は中央集団(第6親衛戦車師団、第18親衛自動車化歩兵師団、第51戦車師団、第103親衛空挺師団と各種支援部隊)が用意されている。

 なお、簡単ではあるが、軍団司令部から師団司令部、師団司令部から隷下の旅団/連隊司令部へと指揮線を辿り、更にその旅団/連隊司令部の指揮範囲内に所属ユニットがいないと、混乱の回復もできない上、ターン冒頭に非移動面へ裏返されて移動不可になることで指揮統制の概念をルール化している。
 また、同じように同一組織の兵站ユニットの補給範囲にいないと弾切れ(砲兵)からの回復が行えず、上級ルールなら混乱回復もできないことで補給の概念をルール化している。
 
 ルールについては和訳ルールサマリーと戦闘例の訳出をダウンロードできるようにしておいたので、そちらに目を通してもらうとして、図解がないと分かりにくい点を主に解説していきたい(自分自身がそうだったが、チャートを実際に使ってみて初めて理解できた事が多い)。
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 まずユニットの見方だが、画像の通り、原則としてユニット能力値は、地上軍・戦闘ヘリ・航空機ともに2つしかなく、主に攻撃に用いるA値、防御的なB値となる。ただ空襲では航空機のB値を用いたり、空戦では防御側の制空戦闘機もA値を用いたりするので一概に攻撃・防御力とは言えない。
 B値の右にある黒い丸●は、そのユニットがZOCを持つ事を表し、敵味方でお互いをZOCに収める物同士にはマストアタックが課せられる。ちなみにZOCの出入りにはそれぞれ+1追加移動力を必要とするが、支払える限りZOC to ZOCが可能となっている。また戦闘の結果、混乱レベルが2に達するとZOCを失うのも戦線の流動性を生んでいる。
 なお、画像にはないが、同じくB値の右に〔*〕とカギ括弧付きの数値を持つものがあり、それぞれ、砲兵や対空部隊なら射程距離(ヘクス換算)、司令部なら指揮範囲、兵站なら補給範囲となっている。こちらも移動モードと裏面の散開モードでは範囲が変化するものがある(主に司令部と兵站)。
 ユニット左肩の所属マーク(Organization Symbol)は指揮統制や補給に際して重要な識別マークとしてだけでなく、初期配置のユニット選別にも便利である(色と形で選り分けやすい)。
 独立補給(Integral Supply)マークは、兵站ユニットの補給範囲外でも、補給下として混乱回復を行えるユニットを示す。ただし、それでも司令部の指揮範囲内にいなければ混乱の回復は行えないのだが。
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 車両シルエットも単なる飾りでなく、裏返すとNATO兵科でいう歩兵マークに変化したりして、それを元に防御地形効果を判断することもある。
 画像の機甲偵察ユニットが、まさにそれで、表はブラッドレー歩兵戦闘車シルエットだったものが、裏面になるとNATO兵科の機甲偵察マークとなり、森や市街地、荒地で守る際に、表のシルエット面より裏のNATO兵科面の方が、防御力の割増が1多い。

 ユニットの色枠(Outline)は、一部の快速偵察部隊にのみライトグリーンで施されており、これは上級ルールで空襲を誘導できる前進航空管制官機能を持つ事を表す。 ただ、残念な事に両軍とも同じライトグリーンの枠取りなので、敵味方を誤認する恐れが多分にあり、プレイ時には、よくよく見分けが必要だ。
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 変わっているのは移動力で、A値とB値の間をつなぐマークが移動形式を表している。
 上の画像にある通り、「―」の無限軌道(キャタピラ)なら6移動力、「※」の戦闘ヘリなら10移動力、「:」の車輪なら4移動力となる。
 そして、ユニットを裏返すと大抵、移動不能を表す「/」となる。
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 航空機の場合、裏面の「汎用編隊面」と、表の「正体露呈面」とがあり、通常は相手に正体を隠す汎用編隊面で飛び、空戦や対空戦、空襲の解決時と自軍盤外へ帰投する際にのみ正体を明らかにする。
 能力値は、例によってのA値とB値で、低速のA-10攻撃機(6移動力)を除き、全ての航空機は10移動力を持つ。
 ちなみに、A値の下に下線が引かれた航空機もあって、それらは上級ルールながらレーダー誘導ミサイルによる遠距離からの空戦を挑める(通常は隣接射撃)。
 また、航空機にのみユニットの向きがあり、機首正面にだけ移動でき、また機首正面にだけ射撃できる。
 そして航空機の移動は特別で、航空フェイズに10回ある航空ラウンド毎に、先攻⇒後攻の順に10移動力を使い切る形で飛行して任務を遂行する(理論上1ターンに100ヘクス移動できる)。

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ゲーム手順は、以下の通り。地上戦では先攻後攻の順に、全て移動し、それが終わったら全ての戦闘を解決する。航空戦でも同じだが、航空機の場合は移動の途中に戦闘(空戦や空襲)を行う。

3.1  準備フェイズ
3.1.1  混乱回復ステップ: 混乱ユニットの混乱回復を試みる(5.1参照)

3.1.2  弾薬欠乏変更ステップ: 対空ユニットを、移動モードに変更する(5.2参照)

3.1.3  航空機配備ステップ:
 航空機ユニットをAIR UNIT PLAY AID TRACK上で移動させ、任務に就ける(5.3参照)

3.1.4  地上/ヘリコプター隊形変換・状態判定ステップ:
 (対空ユニット除く)全ての地上・ヘリUnitについて、個々の移動開始時、表の移動面または裏の散開(非移動)面を選ぶ。
 また指揮範囲外、混乱2または3のユニットは非移動面へと裏返される。

3.2  機動フェイズ
 第1プレイヤーが全ユニットを移動させた後に戦闘する。
その後、第2プレイヤーが同じように繰り返す。

3.3  航空フェイズ
 航空フェイズは10回の独立した航空ラウンドからなる。
 それぞれの航空ラウンドでは、第1プレイヤーの全ての航空ユニットが移動、戦闘を実施する。
 続いて第2プレイヤーの航空機が同じことを実施する。

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 画像の地形効果表を見てもらえば分かるが、移動隊形によって移動コストが異なり、橋梁の無い河川ヘクスサイドも原則として対岸ヘクスの移動コストを2倍払えば渡河できる。逆に橋梁を渡る際にも+1追加移動力が必要なのも特徴と言える。
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 地形が戦闘に及ぼす影響は、防御側の戦力を増加させる形で表され、NATO兵科マークだと守りに有利なので、移動後に忘れず散開状態になった方が良い部隊がある(主に歩兵系)。
 NATO兵科を持たない戦車などでも、散開モードになれば防御力が1上昇(代わりに攻撃力が1減少)する。
 ただし戦闘ヘリの散開は着陸時を表し、極めて脆くなる。

 なお、航空機が2ユニットまでスタックできる他は、全てスタック禁止で、原則的にマストアタックなので、一見するとNAWシステムかと錯覚するほど。それでいて実際にターンを進めていくと、実に現代戦らしくなるのが素晴らしい。

 戦闘解決に関しては、後述の「いろんな戦闘例の訳出」を読んでもらうとして、概略だけ。
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 全ての戦闘は戦力差を基準とし、攻撃側と防御側がA値とB値どちらを使うかは、戦闘の種類によって決まる。
 それを示したチャートがこの「Combat Chart」で、上から順に...
「AIR SUPPORT 空襲」
「MANEUVER 機動戦闘(陸戦)」
「AIR 空戦」
「AIR DEFENSE 防空戦」
...となり、更に対ヘリコプターや航空任務によって細分化されている。
 と言っても単純極まる足し算引き算だけ。
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 ただし、原則として攻撃側を有利にしているので、空戦における攻撃側はA値+1がデフォだったりする。
スタックした戦闘機に背後を取られて攻撃されると、合わせて+2ずつ追加されるので、意外な大戦力で圧倒される事も多く、気をつけたい(何度も泣かされた)。
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 個々の戦闘解決は、画像にある通り、➀「Air Support&Maneuver Combat」、➁「Air Combat」、➂「Air Defense」の3つの表に合わせて、6面体ダイス1個振りで判定される。そして原則的にダイス修正は無い。
 一見して分かるとおり、最低戦力差の欄でも敵に打撃を与える可能性があるという、攻撃誘導型の戦闘結果表になっている。
 そして結果として一発除去があるのは大きな戦力差がついて出目が良かった場合だけであり、通常は少しずつ打撃を累積させていく形となっている。
 航空機の場合は、2打撃の累積で除去されるが、地上/ヘリ部隊は、1混乱で攻撃参加できなくなり、2および3混乱で攻撃不可に加えZOCを失い、移動もできなくなる。そして4混乱に達すると除去される。
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 混乱の回復は、画像の通り、ダイス判定次第だが、所属旅団/連隊司令部に隣接しているとダイス判定に先立って自動的に1混乱回復できるのが肝となっている。
 また、司令部自身も自動的1回復が保証されるので、司令部に対する攻撃は徒労に終わる可能性が高い。なぜなら自動1回復+ダイス判定なので、2混乱の回復も有り得るからだ。
 なお、敵ZOCでは混乱回復に不利な修正が付くため、序盤は防御側が鉄壁の守りに思えても、防御部隊には徐々に混乱が累積していって遂にはZOCを失い、逆に混乱回復できないまま敵のZOCに絡め取られて移動もできなくなり、孤絶して壊滅の道を辿ることが多い。
 その意味で、常に予備を用意しておいて、前線部隊が少し混乱したらすぐにそれを後退させて、代わりに予備を投入して戦線を維持する部隊ローテーションが重要となっている(偉そうなことを言っているが、筆者は上手くローテできた試しがない。
拙者、生来愚鈍のたちでありましてなぁ141.png)。 

by ysga-blog | 2017-04-11 23:11 | 【現代戦:総合】 | Comments(0)
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