対支一撃論ではないけれど...War Storm Seriesシステム解説➋(Compass)Paths to Hell 東部戦線1941

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 個人的に最初に買ったSGが(HJ)戦車戦で、(BAN)最前線や(AH/MMP)ASLをこよなく愛好する身として、これまで幾多の戦術級ゲームをやってきたが、小隊規模のゲームとして最も痺れたのが、この「Paths to Hell 」。
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 では何に痺れたのかと言うと、AFVイラストと指揮官の顔写真、ユニットの大きさに比しての数値記載のバランスといった駒の見た目もさることながら、指揮統制、移動、射撃、白兵戦といった基本システムの素直さ、それに何より中隊単位でのモラルチェックが強いられることによる対支一撃論にも似た、苦しい戦局の中でも一縷の望みを抱ける事や、これがプレイタイムの短縮化に繋がっているのが良かった。
 中隊が潰走/霧散するかもしれないモラルチェックの要因は幾つかあるが、白兵戦での一方的勝利やAFVによる蹂躙の成功がその切っ掛けの要因となっているのが、いかにもそれらしくて良い。
 そうでないと明治42年改正の歩兵操典にある通り、「射撃だけで敵を撃滅することは期待できない。銃剣突撃によって敵を殲滅しない限り、戦闘の目的は達成しえない」と、実際の日本軍のように速戦即決を信条に安易に突撃を選んだりしないからだ。本作でも冗長に射撃損害を蓄積させて敵中隊を破断界に追い込むより、突撃して一撃を加えた方が敵の堅陣が脆くも崩れ去る可能性が高い〔白兵戦に持ち込める限りにおいてだが〕。もちろん白兵戦を成功させる為には、側面や背後から十分な火力を浴びせかけて敵を抑え付け、白兵戦力が肉薄できるようにする必要がある。
 そして他のゲームでは、敵を物理的に完全に打ち崩さないと目標を占領または防御できないが、このシリーズであれば、中隊が保有する総ステップ数の3分の1を越えるステップロスを被れば中隊ごと潰走する可能性があり、戦闘組織としての破断界が目に見える形で存在するのが良い(勿論モラルチェックに成功し続ける限りにおいて最後の一兵まで戦える余地もある)。
 これがあるが故に、まず射撃で敵の力を弱め、可能なら煙幕を張って敵の前線にAFVと歩調を合わせて肉迫し、可能なら敵を包囲する形でその背後を遮断して潰走路を限定または潰走不能で除去できるようにし、更に可能ならAFVと協同して白兵戦を挑むという、ファイア&ムーブメント、包囲、諸兵連合効果の原則が実に有効に機能する。
 また、指揮統制がしっかりしているのも良く、直属中隊長の指揮範囲を離れた小隊ユニットは半分近い確率で何もできず、また指揮外で損害を被るとそれだけで潰走の要因(不利な修正付)になるなど、事実上指揮外では無価値な存在と化してしまう。
 さらに個人的な嗜好は末期戦で、42年以前のテーマには余り食指が動かないのだが(だからFredさんに正月イベントとして誘われるまでプレイしなかった)、このシリーズは戦争初期のちゃちな戦車や装甲車にも活躍の余地が十分にあり、赤軍オートバイや騎兵といった他のゲームではほぼ据え物(例外はボリスのゲーム)でしかない弱小兵科にも大きな使い道があるのが気に入った。
 そんな訳で、ひとくさり本シリーズの気に入った点をお話したところで、本題に入りたい。
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対支一撃論(たいしいちげきろん)とは、 日中戦争初期に武藤章、田中新一らによって 唱えられた事変拡大論で、「蒋介石政府は日本軍による強力な一撃を加えるだけで屈服し 、早期講和に持ち込める」と言うもの。
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【指揮統制】指揮統制と交互活性化について上掲の図を例として解説したい。
 このターンの先攻は赤軍として、T-38水陸両用偵察戦車「S」中隊と赤軍歩兵「L」中隊が、武装親衛隊歩兵「B」中隊を攻めようとしている。
 ゲーム手順で言えば、ターン冒頭でまずダイス判定によって先攻後攻を決めた後、両軍の指揮統制外にあるユニットに指揮統制外マーカを配置しなければならないが、赤軍戦車S中隊長の指揮範囲1ヘクス内にS中隊直属戦車小隊はあり、赤軍歩兵L中隊長の指揮範囲2ヘクス内にL中隊属歩兵小隊もいる。もちろんSS歩兵B中隊長の指揮範囲2ヘクス内にSS歩兵B中隊所属小隊もいるので、お互いに全て指揮統制内にある。
 続いて活性化(アクション)フェイズ。まず最初に赤軍から活性化できるので、最も効率の良い選択肢として赤軍戦車と歩兵とが協同で活性化して、戦車と歩調を合わせてSSに肉薄、しかるのち白兵戦を挑む手がある。図で言えばSSはリアクション・マーカを載せていないので、臨機射撃されても火力は半分でしか撃たれない。
 協同活性化の判定方法は簡単。まずどの中隊長の主導で協同活性を試みるか宣言し、その中隊長の指揮範囲の2倍までの距離内にいる他の中隊長との指揮値(ユニット左下の黄色丸の中の赤数字)合計以下を6面1ダイスで出せれば成功。しかし見て分かるとおり、戦車1+歩兵ゼロなので6分の1でしか成功しない上、この独ソ戦41では独軍には有利な1修正、赤軍には不利な1修正が適用されるので成功確率自体無い。そしてもし失敗すると主導した中隊長には活性化済みマーカが置かれて、その中隊まるごとこのターンでの主体的アクションができなくなる(臨機射撃は可能)。従ってこの選択肢は無い。ただしもし失敗しても罰則は特になく、単に協同活性化できないだけで、主導した中隊長とその配下の小隊だけが活性化する。
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 であれば水陸両用の利点を活かし、池を押し渡って戦車をSSに突っ込ませたいところだが、あいにくT-38水陸両用偵察戦車の白兵戦力は、完全戦力面でも僅か2戦力なので、林(防御3)または独立家屋(防御4)または森(防御4)に立て籠るSS歩兵に突っ込ませても敵に与える損害なく、かえって返り討ちに遭う可能性の方が高い。
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 かと言って車載7.62㍉DT機銃(2火力の豆鉄砲)で、堅固地形に籠る歩兵を撃っても効果は期待薄なので、せめてSS歩兵が潰走する際に妨害できるよう、その背後に回り込みたい。
そこで戦車中隊を活性化させて、上図のオレンジ矢印の通り、移動を試みる。
試みると言うのは池や湿地を押し渡るからで、通常の車両であれば侵入禁止のこれら地形に水陸両用だけは5MPの消費とダイス判定(6面1ダイスで6が出たら移動終了)により移動できるから。なお小川の移動コストは無視できるのでヘクス905は平地の2MPコストで通過できる。この移動に対しSS歩兵は、対戦車火力を持たないので目の前を走り抜けられても指をくわえて眺めている他ない。
そして移動を終えた戦車には活性化済みマーカが置かれて、このターンには臨機射撃もできなくなる(敵が同一ヘクスに突入してくるときの防御射撃は可能)。
 また、図例の赤軍指揮官では能力が低くて無理だが、凡例として、友軍歩兵とスタックする形にしておき、次ターンに歩戦協同突撃を仕掛けるという手がある。そうすれば豆戦車ではあるが、歩兵の突撃前モラルチェックを免除でき、装甲援護修正も得られる。

 次に独軍側に活性化手番が回る。SS歩兵「B」中隊の選択枝は次の通り。

⑴.リアクション・マーカを乗せて、臨機射撃を万全にする。
⑵.遠鉄砲になるが視認できる赤軍歩兵を射撃する。
⑶.ヘクス803の歩兵小隊をヘクス804に移動させて白兵戦に備える。
⑷.後ろに回り込もうとする小癪な豆戦車を追いかけて白兵戦で撃破する。
⑸.パスして様子を見る。

 一番順当なのは⑴の臨機射撃態勢だが、特に現状位置にこだわる理由がないなら⑷も面白い。歩兵の援護もなく単独で突出してきた豆戦車なら容易に白兵戦で撃破できる。ただし豆戦車相手でも対戦車突撃はモラルチェックに成功しないとできない。⑶の兵力集中は、赤軍歩兵が池を押し渡って来られず、また池を大迂回して来るには時間がかかりすぎることから、赤軍が攻め寄せてくるとしたらヘクス805からであり、その場合ヘクス803からだとヘクス804が邪魔(建物でLOSが遮断される)になって臨機射撃もできないので、白兵戦時の厚みを増す為にも移動してスタックするという考え。しかしスタックすると6ステップになるので被弾率が増すのが悩ましい。また移動する事で活性化済マーカが置かれてしまい、移動したユニットに関しては臨機射撃もできなくなる。
⑵の遠距離射撃は、敵歩兵が林と森に位置しているのでほぼ無意味。しかも森と建物の敵に対しては3ヘクス以内でないと視認さえできないので、撃てる小隊はヘクス804の1個しかない。⑸のパスもこの場合、臨機射撃の火力を弱めるだけに思える。
 そこで順当に全ての小隊にリアクション・マーカを置き、SS中隊長には活性化済マーカを置くことにする。
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 最後に赤軍歩兵「L」中隊の活性化手番。最終的にSS歩兵に突撃するにしても、今の位置からは小川(平地1に小川の+2で3MP)と湿地(2MP)が邪魔で敵まで辿り着けない。であれば、背後に回りつつある豆戦車の進出を待ってからでも遅くない。
 と言う訳で小川を越えて対岸に進出しておきたい。小川を渡る瞬間は「危険な行動(リスキー・アクション)」と見なされ臨機射撃修正2が追加され〔リスキー・アクションと見なされるのは大河を渡河している場合〕、更に移動中の被弾修正1も乗るので6面2ダイスの出目マイナス3という恐るべき修正となる。ただしSS歩兵からすれば遠距離射撃なので火力半減が救いだ。
 そこでまずヘクス1105の歩兵を906の林(2MP)に向けて走らせる。当然小川ヘクスでヘクス704のSS歩兵から臨機射撃を受ける(撃ったSS歩兵はリアクションマーカを活性化済マーカに置き換える)。
 火力3で出目7マイナス3で「4」だとすると、射撃結果は「3」。平地(小川)の防御値は2なので1ステップロスを被る。しかし移動を止める事はないので、そのまま林まで駆け抜ける。
 独軍の選択肢としてはヘクス804の歩兵も、赤軍歩兵が小川を渡る際に臨機射撃を行う事だが、ここで撃ってしまうと、残り赤軍歩兵が好き勝手動けるようになるので控える。
 次に黄色の矢印の歩兵が移動する。防御効果の高い森(2MP)を抜けて小川に進出する。ここでヘクス804のSS歩兵が臨機射撃を行い、6以下を出すと2ステップロスを喰らうが、それはそれで最後の赤軍歩兵(中隊長スタック)が進路変更してこの小川に進出する理由になる(スタックしても6ステップにならないので)。もし小川に進出した歩兵が無傷だったら、図の矢印の通り、中隊長スタックは森に移動して終わる。
 大胆さを誇るならヘクス1105の建物からヘクス1005の湿地に進出させて、次ターンの突撃に備える手もあるが、ヘクス803からの臨機射撃に晒される。それまでの損害累積が小隊数の3に迫っていれば、その臨機射撃によって3を上回り、いきなり中隊モラルチェックを強いられて中隊が潰走を始める可能性があるのに注意したい。
 また前述したが一つの手として、豆戦車を小川ヘクスで停止させて、装甲援護効果ダイス修正+1の恩恵に与るという手もある。
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【新しい図版が見つかったので白兵戦の具体例追加】
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独軍歩兵「E」中隊が活性化し、ヘクス203へ突撃を仕掛けると決めた。2個小隊とも移動力的にはヘクス203へ進入するMPを残して目標ヘクスに隣接した。
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「E」中隊は突撃を宣言する
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 これに対しヘクス203のベルギー軍歩兵小隊は、独軍中隊長のいるヘクス303に対して防御射撃を行った。
 ただしベルギー軍歩兵小隊は臨機射撃〔リアクション〕マーカを乗せていないので火力は半減〔端数切上〕して3火力となる。
▼2D6の出目は5。修正は移動目標稜線(crest)越えで相殺されてそのまま。結果はヒット数3、平地防御値2で1ステップロスを喰らった。
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▼1ステップロスした完全戦力面の歩兵は、火力とモラルが1低下する。幸い、指揮官除去判定は無事パスした。
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▼防御射撃を解決したら続けて突撃前モラルチェックを行う。E中隊のモラルは7、中隊長の指揮範囲内なのでその指揮値3ダイス修正を加えて10ベースなのでヘクス204の小隊は、2D6して10以下を出せれば突入成功。ヘクス303は7から損害の1を引き成功のベースが6、ここから共に突入すると宣言した中隊長の指揮値3ダイス修正を加えて9以下成功だったが不運にもしくじった。
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結局、突入できたのは独軍1個小隊だけで、ベルギー小隊と対決する。
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お互いにゼロ損害の歩兵なので白兵戦力4同士、従って1対1(下記の戦闘比計算表を見るまでもない)。
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攻撃側の独軍歩兵の士気値は7であって8ではなく、ベルギーも6以下ではない。
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1D6の出目は3だったので、防御側のみ1ステップロスを喰らって敗北。1ヘクス退却して中隊モラルチェックを強いられる〔中隊長の指揮範囲内なら指揮値を修正として得られることに注意〕。独軍小隊はヘクス203を占拠する。
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by ysga-blog | 2018-02-03 19:40 | 【その他戦術級ゲーム:総合】 | Comments(0)
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