![]() マイケル・ベイ監督の「バールハーバー」の続編と勘違いされている方も見受けられますが、こちらは、日本でも上下巻で出た戦史本の「空母エンタープライズ」と、それに触発されて製作されたCSヒストリーチャンネルのドキュメンタリーシリーズ「バトル360 エンタープライズの戦い」を下敷きにした、古き良き戦争映画大作の王道を行く内容で、エンタープライズ所属の艦爆パイロットを軸にしながらも、ニミッツ、ハルゼー、山本五十六、山口多聞ら上級指揮官の苦悩も大いに取り入れた、往年の名作「トラトラトラ」や「遠すぎた橋」を彷彿とさせるものになっています。 しかも売れっ子監督らしくとてもテンポが良く、戦闘シーンの連続で、約2時間半の長さを感じさせず、一気呵成に観られます。 特に良かったのは、トンデモ日本軍描写だった映画「パールハーバー」の対局に位置する良心的な日本軍描写で、なんと日本側は全編日本語そのまま(米国上映では嫌悪される英語字幕)で、豊川悦司の山本五十六や浅野忠信の山口多聞も、邦画「山本五十六」の役所広司や阿部寛より地味な顔立ちなのが、かえって本物らしく見えてきます。個人的には映画「トラトラトラ」より沁みました。 クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」でも悔しい思いをしましたが、なぜこれが日本映画でないのかというほど、良く描けていると思います。 なお、南雲役の國村隼が両者の引き立て役として愚将っぽく描かれていますが、映画的に分かりやすい構図にするための必要悪と割り切れば全然イケます。 ![]() ![]() 語りたいことは山ほどありますが、それは劇場に足を運んだゲーム仲間と例会後の晩飯で語り明かすとして、最も個人的にシビレたのは、きっと省かれるだろうと思っていた米空母初の本格攻撃、1942年2月1日のマーシャル群島空襲を10分以上描いてくれた事で、前述したドキュメンタリー「バトル360 エンプラの戦い」第1回の当該部分でさえ一式陸攻と間違っていた九六中攻によるエンプラへの水平爆撃と、被弾した九六中攻1機がエンプラに体当たりを試みた史実がドラマ化されていたのには男泣きを禁じえませんでした。 ![]() 事実は小説より奇なりなのですが、自爆の道連れに突入してくる九六に対して、下っ端整備兵がドーントレスの後部銃座に駆け上って7.62ミリ連装機銃を撃ちまくり、突入進路を僅かにズラされた九六は、その整備兵の乗るドーントレスの後ろ半分を翼で切断して空母の脇に没するのです。 これを艦橋から目撃したハルゼーは、すぐに整備兵を呼びつけて戦時昇進させ、整備兵は乗りたがっていたドーントレスの後部銃手となり、やがて訪れるミッドウェイ海戦において戦慄の体験をすることに... ![]() ![]() なお、上記はネタでなく全部史実なので、ネタバレには当たらないでしょう ![]() ![]() ちなみにドキュ「バトル360」に主な証言者として登場しているのが、#4投弾者のダスティ・クレイスでした。 ![]() とにかく、戦時空母とドーントレス、デバステイターをこんなに観られる映画は、今後二度と作られないでしょう。戦後は遠くなりにけりで史実準拠の映画は、ますます人気がなくなりつつありますから。 ちなみに不思議な事に米軍戦闘機は全く出ません。真珠湾前の場面でエンプラ格納庫にF2Fバッファローらしきものが吊り下げ搭載されているらしいものがあるぐらい。それだけドーントレスとデバステイター隊に焦点を絞っているということかもしれません。 この映画「ミッドウェイ」も大手の配給ではなく、なんと木ノ下グループの配給(キノ・フィルム)で、映画館でも大作扱いではありません。 たぶん2週間で上映終了になって、二度と劇場の大スクリーンでは観られないと思います。 その意味で、少しでも興味のあるゲーマーの方々には、是非劇場に足を運んでいただきたいと願わずにはおられません。 映画会社の片棒を担ぐわけではありませんが、物心ついた時から戦争映画ばかり観てきた者として、少しでも多くの方にこの良作を印象に残る大スクリーンで観てもらえるよう、封切り上映終了までの僅かな期間、この記事を1ページ目に掲げ続けますことをお許し下さい。 (次のYSGA例会日である9月27日には、きっと上映終了しているでしょう ![]() (GMT)Zero!/Corsairs & Hellcats C3I Magazine 第16 号掲載 The Marshall Islands raids,1942 ![]() ちなみに映画では、迎撃に上がってきた零戦とドーントレスとが空戦を繰り広げる。 ![]() Zero!-DiF Series Campaign The Marshall Islands raids,1942 訳註:米海軍は太平洋機動部隊の全力を挙げて、対日反攻の開始を1942年2月1日と決定、クェゼリンを始めとするマーシャル、ギルバート群島の日本海軍前進基地を叩くべく着々と準備を進め、計画通り同日、ハルゼー中将率いる空母エンタープライズより雷爆連合数十機が、まだ明けやらぬ東の空からクェゼリン環礁目指して飛び立った。完全な奇襲となったこの空襲で日本軍は補助艦3隻沈没、大破1隻、中破2隻、小破5隻、航空機は炎上、未帰還併せて18機、陸上施設の多くを焼失、破壊され、人的被害は軍人軍属の戦死86、負傷92、一般人(現地人含)死傷92の計236人に上った。この中には第六根拠地司令官八代少将の戦死、第六艦隊司令長官清水中将が(香取への至近弾により)重傷を負って更迭されるなど、日本軍にとってまさに完敗であった。 本キャンペーンの概要(Rules Summary) ☆.3つのミッションで構成される。 ☆.空戦ミッション(Mission 2)を除く残り2つの攻撃ミッションは、通常通り、提示された往路、帰路ターンから爆撃機のスピード値を減算して求めたターン数でそれぞれ行われる。 ☆.両軍ともミッション毎に指定された機体、機数だけを使用する。ミッションからミッションへ繰り越すことや、あるミッションでの損害が他のミッションに影響を及ぼすこともない。 ☆.これは史実に基づくヒストリカル・ゲームであり、両軍とも名のある熟練パイロットは登場しない。ただしもし純粋なゲームとして楽しむ為ならば、ミッション2の日本軍戦闘機に限り熟練パイロットの有無判定〔19.24〕を行ってもよい(訳註:機種名「九六艦戦」A5Mの熟練パイロットカウンターは無いので、九六艦戦で育った零戦(A6M)パイロットを使用するものと思われる)。 ☆.重要な注意:ミッション3で使用する九六陸攻(G3M)は爆装のみ許される。雷装はできない。 ☆.ミッション3で使用する米空母は、広域対空射撃2、目標からの対空射撃2の目標シート(Carrier Fleet:2B)を使う。なおコルセア&ヘルキャットを所有しているなら、空母目標シート(5A)の目標からの対空射撃力を3ではなく2と見なして使用すると良い。 なおミッション3で使用する空母損傷度数は以下の通り。 0~3:損害軽微(Undamaged)、4~8:中破(Damaged)、9~13:大破(Crippled)、14以上:撃沈(Sunk)。 (爆撃結果カードと対応ダメージ:Miss/Hit/Direct/Vital=0/1/4/7) 製作註:1942年当時のエンタープライズは、まだ目標からの対空射撃力が2であった。対空兵装が強化された戦争後半のキャンペーンでは3となる。 ☆.以下の各ミッションが終わる毎に個々の勝敗を判定し、最後に3ミッション全体での勝敗を判定する。 ★ミッション#1: 戦場:ロイ島 目標シート:飛行場(Airfield:3A) 攻撃側航空機:L/W SBDドーントレス急降下爆撃機2エレメント 開始高度/往復ターン:任意/往路8、帰路7ターン ★ミッション#2: 戦場:タロア島 目標シート:空戦(Dogfight:1B) 攻防航空機:L/W F4Fワイルドキャット戦闘機1エレメント対L/W九六艦戦(A5M) 1エレメント 開始高度/空戦ターン:任意/6ターン ★ミッション#3: 戦場:空母エンタープライズ 目標シート:空母(Carrier Fleet) 攻撃側航空機:九六陸攻(G3M)4機(爆装) 開始高度/往復ターン:超低空/往路7、帰路6ターン ●日本軍側リソース ミッション#1:L/W九六艦戦(A5M) 1エレメント ミッション#2:無し ミッション#3:無し ☆米軍側リソース ミッション#1:無し ミッション#2:無し ミッション#3:L/W F4Fワイルドキャット戦闘機1エレメント ■勝利判定(米軍VP-日本軍VP=下記勝敗基準) ミッション#1:+9VP以上ならこのミッションは米軍勝利 ミッション#2:+5VP以上ならこのミッションは米軍勝利 ミッション#3:もしエンタープライズが中破(Damaged:4-8打撃)したらこのミッションは日本軍の勝利。もし万一エンプラが9打撃以上被って大破(Crippled)または撃沈(Sunk)に至ったなら、個々のミッションでの勝敗に関わらず、このキャンペーン全体に関して自動的に日本軍の勝利と見なす。 原則的に3つのミッションを終えた段階で、より多くのミッションで勝利を得ている側がこのキャンペーンの勝者となる。ただしミッション3において米空母エンプラが大破または撃沈のいずれかであれば自動的に日本軍が勝者となる。 ▼半月ほどこの記事が冒頭に掲載され続けるので、新作ゲーム情報も少し。 もはや、かつてのウォーゲームブーム期など足元にも及ばないほどの新作ラッシュを仕掛けてくるCompass社の新作ゲーム初出し箱絵。 個人的には、左下の『ローマの勝利』に興味津々。 右上の独ソ戦作戦級ゲーム・クワドリ(4ゲーム同梱)は、SPIの例もあり、期待半分不安半分。 ![]() ▼こちらはテッド・レイサーのThe Dark Valleyシリーズ第4弾予定の『デッドリー・ウッズ(死に至る森)』。 発売予定の第3弾『The Dark Summer』がノルマンディなので、こちらはアルデンヌ反攻。ただし出版元は今までシリーズ展開していたGMTではなく、レボリューション・ゲームズ。 あくまで憶測だが、GMTからは既に沢山アルデンヌ反攻ゲームが出ているので渋い顔をされたのか、それともより良い条件でヘッドハンティングされたか ![]() でも、レボ社の方が日本版コマンド・マガジンの付録になりやすいので、その意味でも出来が気になります。
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| 2020-09-15 11:45
| 【ガレー船から空母まで海戦:総合】
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