Imperial Tide The Great War 1914-1918 松谷健三さんと、これまでPacific Tide ⇒オストクリーグとプレイしてきて、シリーズ3作目のこちらを和訳のバグ取り目的でプレイ。 結論を先に言うと、これが一番面白かった。 最後の最後までどちらが勝つか分からないバランスで、ロシア戦域とバルカン戦域にリソースを割き過ぎた中欧同盟軍(セントラル・パワー:CP)が西部戦線で押しまくられてベルリンまで脅かされる絶望的状況から、2次大戦のバルジ反攻がアントワープまで占領してその後の反撃を凌ぎきって薄氷を踏む思いで勝利を収めたような劇的展開で盛り上がった。 ☟第2ターン(1915年)の途中。独軍がオーストリア軍の後詰まで引き連れて中央突破(2次大戦と違って電撃的に進軍できないのが実に第一次大戦らしい作り)。 初の毒ガス攻撃を白ロシアの首都ミンスクに敢行してミンスク占領。 しかしロシアはリガ、ミンスク、キエフの3首都(=VPエリア)を同時に占領していてようやく打倒される(1917年までは。1918年には2首都で打倒できるが1VPにもならず)。 ちなみにこのゲームの戦闘結果表はファイアパワー方式で同時射撃同時適用。ただし移動の代わりに塹壕を掘っていれば(駒野裏面が塹壕に入ってます表示)、1打撃打ち消しと退却無視。 ☟ 当初の中央軍戦略(ロシア打倒)はどこへやらほぼロシア戦線に独軍は存在せず、オーストリア軍やトルコ軍で防衛線を敷いている始末。しかしルーマニアの首都を占領し、ギリシァの首都攻略に邁進している。 ☟ 一方、西部戦線は目も当てられぬ惨状で、ドイツ本国のVPボックスであるエッセンとフランクフルト(都市名が赤いのがゲームで便宜的に首都と称されるVPボックス)に英軍と米仏軍が隣接。 ☟ さらに南チロルはイタリア軍に占領され、望めばそこから独軍の背後や、オーストリアの首都ウィーンやブダペストまで狙える。 連合軍の切り札「塹壕効果無視の戦車攻撃」カードによってエッセン、フランクフルトを占領した連合軍は勝ちに乗じてベルリン占領でのサドンデス勝利まで狙って前のめりに主力を前進させた。 これに対し南ドイツに逼塞させられた独軍は、戦略移動カードで南ドイツに東部戦域から兵力を移動。ベルリンの守りにトルコ軍1戦力まで送り込む。 初プレイで1918年の独軍カードの内容にまで気が回らなかった連合軍はさらにベルリンへ兵力を近づけた。 それを見届けた独軍は1918年専用切り札の「砲兵戦術」で、独軍に隣接する1箇所の敵2戦力(塹壕にいるなら1戦力)を自動的に除去した上に、連合軍に手番を渡さずに続けて別カードを出せる効果で、南ドイツに貯めた兵力で北へ突進してエッセン、フランクフルト以東の連合軍の背後を断った。 このゲームではゲームターンの終了時に補給が切れていると問答無用で除去される(敵VPボックスの占領条件は守備兵力が最低1戦力あることなので支配を失ってVPも得られない)。かくして連合軍は数少ない後備兵力を掻き集めて連合軍手番ラストとなる戦車攻撃カードまで使ってリェージュの独軍を駆逐して補給線を繋げるも... これにより以東の連合軍はゲームターン終了時の補給切れ除去となり、奇跡の中欧軍勝利が確定した。 ただし事はそう単純でなく、年度のカードは2つのデッキに無作為に分けられて、前半のカードが残り1枚になるまで後半のカードを使えないので、カードの内容にもよるが後半のカードを早く使う為には前半カードを早く使い切る必要があって、補充ポイントでお茶を濁している余裕がないことが多い。と言葉で言ってもピンとこないだろうから、プレイして体感してもらうしかない。 書きたいことが多すぎて順序がむちゃくちゃになっているし、和訳がもうすぐクロノノーツさんで公開されるので、そちらを読んでもらうとして、ここでは何が面白かったのか、そして次にプレイする時の備忘録としたい。 一見するとドイツだろうがギリシャだろうが何の変わり映えもしない1戦力は1戦力で、国籍の特徴など無いように思えるが、厳密なスタック制限と毎年変動する補充ポイント、ユニット戦力の上限と攻撃できるのが1ボックスから隣接する1ボックスまでというルールによって、プレイしてみると実にそれらしくなる。 例えば原則的にスタック禁止なのでドイツ、フランス、イギリスだけが5戦力まで1ユニットの戦力を増やせるのに対し、オーストリア・ハンガリーとロシア、イタリア軍は3戦力上限、その他の国は2戦力上限なので、ドイツ5戦力がロシア3戦力を攻撃する有利さが分かる。しかし塹壕化されるとその有利さもほぼ中和されるのだが(そこでカードイベントの毒ガスや戦車、突撃隊、航空支援が効いてくる)。 そして多国籍のスタックが許されるのは英軍とベルギー軍、英軍(または仏軍)とセルビア軍、米軍と仏軍、独軍1戦力と他の中欧軍だけ。従って英軍と仏軍はスタック禁止だし、ギリシャの首都アテネを増強したくてもギリシャ軍1戦力がアテネにあれば英仏軍の誰もスタック禁止によって送り込めない。またベルリン危うしと緊急的にオーストリア軍を入れたりすると、動員カードでベルリンに独軍戦力を湧かせようとしても盟友軍とのスタックが許される独軍1戦力までしか湧かせられない(ただしエッセンに残りを湧かす選択肢が残される)。 このVP価値がパリだろうがアテネだろうが一律1VPというのが効いていて、バルカンが他の第一次大戦ゲームにないぐらい重要になっている。その為、サロニカ上陸やガリポリ上陸の重要性を痛感させられる。 また、セルビア軍もベオグラードの守りにこだわるより、サロニカ隣接まで早期に撤退しておく方が最終的な勝利に貢献できる。サロニカ上陸カードを出したら可及的速やかにサロニカへ下がって守りを固めるため。サロニカが落なければアテネの1VPへの道は開かない。 さらに言えば、ルーマニアの連合軍参戦は連合軍プレイヤーの選択(カード使用)に任されるので、あえて参戦させずに不可侵の中立状態に留めておいた方が連合軍の勝ちに繋がる可能性がある。ブカレストが中欧軍に占領されると奪回が難しいので、みすみす貴重極まりない1VPを中欧軍に呉れてやることになりかねない(史実がそう)。 なおガリポリの重要性は、トルコとブルガリア軍をそこに貼り付かせる牽制効果で、これがないと後顧に憂いを持たない両軍が、喉から手が出るほど兵力を欲している他戦域へ後詰として出しゃばり出すため(今回の初プレイでは1918年にドイツ本土の防衛へ振り向けた)。 ちなみに連合軍のガリポリ上陸カードは、1915年ならガリボリに英軍2戦力を新たに湧かせられるが、16年以降に使うと1戦力しか貰えなくなるので、やるなら早い時期でないと勿体無い。 なお簡単に書いているが、連合軍のサロニカ、ガリポリは海輸でしか増強できず(通常戦力補充不可)、英軍は各ターンに1戦力だけ海輸移動可で、仏軍や追加の英軍戦力の海輸は、わざわざその為に高いカードを買わなければならない。しかし戦略的には十分その価値が有る。 「あんなド田舎、欧州大戦に何の関わりがある!?」なんて軽視していたらアテネの1VPで連合軍は負けたなんて事になりかねない(それほど1VP獲得するのが大変なゲーム)。 戦闘解決には普通にファイアパワー戦闘結果表で6面2ダイス振る方法(戦闘後前進あり)と、「消耗戦」と呼ばれる原則的に両軍が1戦力ずつ失う方法(戦闘後前進なし)とがある。ただし消耗戦も6面ダイス1個振って、1が出ると攻撃側のみ1打撃受けて防御側は無傷となる。 一見すると消耗戦は効率が悪いように思えるが、消耗戦は塹壕効果も山地効果も関係ないので、ほぼ確実に1打撃与えられる。例えば山地に塹壕掘って守られると通常戦闘ではほぼ難攻不落なのだが、消耗戦ならほぼ確実に1ずつ削っていける(もちろん自軍も1ずつ削れるが)。特に1戦力で守っているなら簡単に駆逐できるのが大きい。 毒ガスや戦車攻撃で敵戦線に大穴を開けてもそこを突いて大突破したりできなかった史実を再現する為に、1枚のカードで攻撃した目標ボックスが例え攻撃の結果カラになっても、そこには戦闘後前進でしか入れない。⇒これがこのゲームで最も斬新な概念かも知れない。また攻撃発起ボックスに移動で入ったらそこで強制停止(移動終了)となる。 攻撃と移動のタイミングはカードのテキストで厳密に決まっており、一部のレアカードを除き、攻撃を先に済ませてからしか移動できず、さらに同一ユニットは1枚のカードでは攻撃(+許されるなら戦闘後前進)か、移動のどちらかしか行えない。 塹壕効果で防御側は打撃1減の退却無効(通常、防御側の方が攻撃側より1でも多くの打撃を喰らったら退却強制)であり、カードイベント以外では同時射撃同時適用なので、攻撃側の方が被打撃確率が高くなる。
by ysga-blog
| 2022-02-20 19:14
| 【Great War/WWⅠ:総合】
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